ホラー映画や怪談話が時代を問わず人気なのは、未知への好奇心やスリルを本能的に求めて怖いものに触れようとするからだろう。2ちゃんねるのオカルト系スレッド「死ぬ程洒落にならない話を集めてみない?(通称:洒落コワ)」というスレッドも、多くの人々で賑わう。その中でも特に人気の高かった“ウニ”による“師匠シリーズ”がこの度書籍化され、『師匠シリーズ 師事(税込1365円)』として双葉社から1月下旬に発売となった。
2003年頃から2ちゃんねるで連載スタート。人気投票では殿堂入りを通り越し「洒落コワ無双」という称号まで贈られ、10年以上経った現在もPixiv等で連載中という、非常に息の長い人気シリーズだ。
大学進学のために田舎から出てきた主人公兼語り部“ウニ”が、異常に霊感の強いオカルト道の“師匠”と出会ったところから物語がはじまり、次第に彼らの周りに様々な怪事件が起こり……という内容なのだが、短編を中心としながらも各エピソード同士の随所にリンクが見られたり、黒魔術、民話、宗教などのテーマを核にしながら広がりを持たせ、単なる心霊体験や怪談話にとどまらないようにするなど、その創作クオリティと文章力の高さで読者を強力に惹きつけている。
例えば、1週間持っていると願いが叶う「黒い手」、 黒魔術の儀式とも言われる「ローシュタインの回廊」、死者と打つ「手紙将棋」、女子高生ヴァンパイア、ドッペルゲンガーなど話は実に多様。特に、ウニの田舎である四国へ帰省の際に起こる出来事を描いた「田舎編」は、陰陽道や修験道、密教や神道などが入り交ざった民間信仰「いざなぎ流」を題材としており、オカルトマニアでなくとも読み物として楽しむことができるだろう。
また、登場人物が個性的で、ミステリアスな面を多く持ち合わせているのも魅力的だ。尋常でない行動力と探究心を持つ破天荒な“師匠”、師匠の彼女であり予知夢等の能力がある“歩く(ありく)”、ウニが入り浸るオカルトフォーラムのメンバーで、師匠とは犬猿の仲のクールビューティー“京介”など。
そんな彼ら自身の不思議な能力や謎が気になり、ついページをめくる手が止まらなくなるはずだ。第一弾の『師事』ではまだ登場人物は少ないが、連載の方では“師匠”の“師匠”が活躍するなど、さらに個性的なメンツが登場するので、いずれ書籍でもお目にかかれるだろう。
今回の書籍化で、連載初期のエピソードや、先に挙げた「田舎編」が3部構成の完全版として収載された。特に未完だった「田舎編」の完全版は初の公開で、すぐにファンの間で話題となり、発売後1週間程度で品薄となってしまい、重版を決定したとのこと。またほとんどの話に加筆修正が加えられているので、ネット上ですでに読んだという読者も新たに楽しめる内容となっている。
『師匠シリーズ 師事』は全国の書店やAmazon、楽天などのウェブショップで販売中。双葉社のサイトでは立ち読み可能。
『師匠シリーズ 師事』を立ち読みする
http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-23848-8.html
双葉社
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