アドルフ・ヒットラーの極秘文書を巡る壮大なサスペンスドラマ

140801_ad_01140801_ad_02アドルフ・ヒットラーにはなんと出生の秘密があった。その秘密が公開されれば、ナチスは混乱し崩壊してしまうに違いない。そんな秘密を暴こうとする者、隠そうとする者の攻防、そして巻き込まれた人々の悲劇……。

『アドルフに告ぐ』は第二次世界大戦前後を舞台にした物語ではあるが、サスペンスあり、人間ドラマありの壮大なエンターテインメントとなっている。
また、そのタイトルから、ヒットラーの物語と思われがちだが決してそうではない。言論の自由がない時代にあって、正義とは? 信念とは? 生きるとは? など、改めて戦争とは何かを考えさせられる物語なのである。

物語は第二次世界大戦前、ベルリンでひとりの日本人留学生が殺されたことから始まる。その青年の兄である新聞記者・峠草平が事件の真相を探るが、そのためにナチスの拷問にかけられてしまう。事件にはナチス総統アドルフ・ヒットラーの重大な秘密が関係していたのである。

また、物語の中心となるのは3人のアドルフ。アドルフ・ヒットラー、アドルフ・カウフマン、アドルフ・カミルという同じ名前を持つ男たちである。ナチス興亡の時代、日本とドイツを舞台に峠草平を狂言回しとして、彼らが辿るあまりにも数奇な運命が描かれていく。

最近では『ブラック・ジャック』ばかり取り上げられる手塚治虫だが、『アドルフに告ぐ』のように戦争をモチーフにした作品は意外に多い。特に短編などでは自身の体験をモチーフにし、戦争体験者ならではの描写が見られる。『アドルフに告ぐ』もそうした作品同様、神戸空襲の場面では、その時の悲惨さが見事に描かれ、「戦争を二度と起こしてはならない」という手塚治虫の思いが強く感じられる。彼の思いやメッセージはこうした作品によって、後世に伝えられることだろう。

手塚治虫は生涯、多くの名作を残した。『アドルフに告ぐ』も紛れもなくそのひとつである。第二次世界大戦前後の日本とドイツを舞台に描かれたこの作品は、いかに戦争が人の人生を狂わせるか、また様々なものを奪ってしまうのか、考えさせられる。終戦記念日を間近に控えたいま、ぜひ読みたい作品である。
三栄書房の黒の手塚治虫シリーズ第3弾『アドルフに告ぐ』は上下巻同時発売。ともに価格639円(税別)で8月1日より全国のコンビニエンスストアで発売中。

三栄書房サイト
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