東京モーターショーで“Out of KidZania in TMS2019”に参加してきた

クルマ造りを支える職人技を小学生が体験

お台場エリアで2019年11月4日(月・祝)まで開催中の『第46回東京モーターショー2019』。会場が有明エリアと青海エリアに分かれた今回は、各自動車メーカーによる新型車やコンセプトカーの展示に加え、“OPEN FUTURE”と題した未来への可能性を示すプログラムが用意されている。

中でも小学生の子供を持つファミリー層が気になるのが“Out of KidZania in TMS2019”だろう。ファミリー層にはお馴染みの体験型商業施設“キッザニア”と東京モーターショーがコラボしたプログラムだ。モーターショー会場に創られた“こども達が働く街”で、小学1年生から6年生までの子供たちがカーデザイナーやメカニックなどクルマに携わる様々な職業を体験するプログラムである。

“Out of KidZania in TMS2019”に参加するには、事前に“プログラム参加券付き入場券”を購入するか、参加時間枠の開始3時間前から予約可能な“当日予約”が選択できたが、“プログラム参加券付き入場券”は早々に完売。注目度の高さが伺える。編集部は10月26日に参加したので、その様子をレポートしよう。

“Out of KidZania in TMS2019”では自動車関連企業10社が体験教室を実施。プログラム開始30分前に受付に集合して参加する企業を決めていく。集合から実施までの体験時間を除き、プログラムの体験時間は実質的に30分弱と言ったところだ。プログラムの予約は先着順になるため、お目当ての企業が決まっている場合は、早めに集合場所に足を運ぶと良いだろう。

実際に参加した小学5年生の息子によると、目当ては“レーシングドライバーの仕事”が体験できるHONDAが第1候補で、続いて“クルマをメンテナンスする仕事”を体験するSUBARUを狙っている様子。どちらもレーシングカーの実車を展示するブースで、実に小学生男子らしいセレクトと言える。

ところが実際に受け付けがスタートすると、落とし穴が待ち構えていた。“Out of KidZania in TMS2019”では、実施時間中に各メーカーが持ち回りで休憩時間を設定していて、参加した時間帯ではHONDAとSUBARUが休憩中。まさかの第1候補と第2候補が体験できない事態に陥った。
最終的に申し込んだのは“金型磨き職人の仕事”を体験するMAZDAブース。決め手になったのはブースに「MAZDA ROADSTER」のボディを展示していたことだろう。小学生男子の興味を惹くには実車の展示が有効だ。

繰り返しになるが、ここで体験するプログラムは“金型磨き職人の仕事”だ。多くのクルマは1万個以上、多い場合は3万個のパーツが使用されているが、その多くは金型によって成型される。ボディやボンネットなどの金属パーツだけでなく、エンジンのダイカスト、動力伝達用パーツの鋳造、さらにガラスやプラスチック、そして電装品パーツまで、あるとあらゆるパーツに“金型”が使われる。
クルマの生産ラインは多くの工程が自動化されているものの、パーツの仕上がりを左右するのは職人による丁寧な“磨き上げ”に掛かっている。MAZDAの哲学である“魂動デザイン”も“金型磨き職人の仕事”なくして実現できない。

ちなみに今回のブース中央には、ロードスターの前輪フェンダー周り用の金型が展示されていた。華やかな演出が施された他メーカーのブースに比べると見た目は地味かもしれないが、普段見ることのできない光景から“本物らしさ”が感じ取れる。

今回の“Out of KidZania in TMS2019”では金型磨き職人の作業を参考に、金型の表面に見立てた金属プレートをサンドペーパーで磨いていく。プログラムが開始すると作業着とヘルメットを着用。子どもたちが少し引き締まった表情になった(ような気がする)。使い捨ての手袋をはめるだけで目がキラキラしている子供の姿が、1時間以上の駐車場待ち渋滞に耐えたパパの心を癒してくれる。

作業準備が整ったら体験プログラムがスタート。金型とは何か、金型を手作業で磨くことの重要性をレクチャーされた後、実際に職人がサンドペーパーで金型を磨く作業を披露。その作業を参考に、手元の金属プレートを2種類のサンドペーパーで磨き上げるのだ。
工程を文章にするとシンプルになってしまうが、金属を磨き上げる作業は普段の生活ではなかなか経験できないこと。参加した子供たちも、自身の作業で少しずつ輝きを増すプレートに興味津々。納得のいく仕上がりになった際のドヤ顔も必見だ。

“キッザニア”とのコラボレーションらしさを感じたのは最終工程だ。“金型磨き職人の仕事”で磨いたプレートは、MAZDAの“ソウルレッド・プレミアム・メタリック”を連想させるボールチェーンを通してキーホルダーとして持ち帰ることができる。

ただ、ボールチェーンを留める作業は低学年の子供たちには少しハードルの高い作業となる。失敗を繰り返す子どもを見ると大人が手伝ってしまいたくなるが、ブースのスタッフは成功するまで丁寧に説明を繰り返すのみで決して手を出そうとしない。子供が主役の体験プログラムだけに当たり前と言えば当たり前だが、時間が限られているイベントでは、つい大人が余計な手伝いをしてしまいがちになる。この部分が徹底されている部分は“キッザニア”とのコラボレーションする重要性を気付かせてくれた。

初の試みである“Out of KidZania in TMS2019”の評判は上々で、“プログラム参加券付き入場券”も早々に完売している。来場者数に比べて参加枠が少ないことや、チケット購入時に休憩している企業の情報が無かったことなど改善すべき箇所はあるものの、ファミリーカーとしてのSUV人気が高まり、走りのイメージが強いSUBARUが“安心と愉しさ”というスローガンを掲げているいま、現代的なカーライフを反映したプログラムと言えるだろう。

SNSでも次回以降の継続した実施を求める声も少なくなく、子どもを自社のファンに取り込む可能性を秘めたイベントは、自動車メーカーにとってもメリットがあるハズ。既に自動車メディアやSNS上では、今回の東京モーターショーだけでなく、その未来についてもネガポジが混在する様々な意見が飛び交っている。
ただ、プログラムに参加した家族の立場で言えば“Out of KidZania in TMS2019”は今回の成功事例に強く推したいのが本音だ。

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