その昔、一時代を風靡したベークライト(合成樹脂)の本体にレンズ・シャッターが付いただけのシンプルな構造でトイカメラ/ベークライトカメラ/子供カメラなどと呼ばれていた「スタート35」。これが1950年に一光社から発売され大評判となり数多くの機種が生産されブームになった。若い世代の読者は知らないと思うが、年配の読者なら子供の頃、親にねだって買ってもらったという経験がある人もいるのではないだろうか?
そのトイカメラも当時のネガは、ほとんど残っていないようだ。『私のカメラ初体験 現代カメラ新書No.16』(朝日ソノラマ・1976年)によると森山大造氏の初めてのカメラはスタートカメラだったらしく「そのカメラで写した写真の一枚すら手もとに残っていないことは、やはりとても残念な気がします。」と記載されている。
今回の写真展は、写真界の発展に貢献した写真家「新山清」だ。彼の造形感覚あふれる主観主義写真は国内外で高い評価を得ており、そのアート的な表現写真による独特な視点とトイカメラによるフットワークの良い視点から撮影された街や素朴な感じで写る人々を中心に展示されるという。
トイカメラならではの風景と時代の切り取りを観ながら、新山清が残した800枚以上のネガから、JPG(Jam Photo Gallery)セレクションとして、モダンプリントや作品集の販売が行われるそうなので、自分のお気に入りの1枚を探してみるのも良いだろう。
現代では、とても味わえない戦前・戦後のアートの世界や優しい眼差しで見つめる昔の人達の暮らしぶりを知るのに良いチャンスだと思う。自分の感覚を磨くために、是非ともこの写真展に行ってみようではないか。
◆新山清生誕110年記念 Jam Photo Gallery Selection
ベークライトカメラ スタート35 新山清写真展
日時:2021年10月12日(火)~10月24日(日)
12:00~19:00(日曜 17:00迄)月曜日休館
会場:JPG(Jam Photo Gallery)
東京都目黒区目黒2-8-7 鈴木ビル2階B号室
℡050-5438-2134
https://www.jamphotogallery.com/