2023年4月1日(土)、2日(日)と「静岡まつり」が静岡市駿府城公園で開催された。この歴史は古く400年という伝統ある静岡浅間神社の「廿日会祭」に呼応して昭和32年から始まった市民の祭りだ。
その祭りのトリを飾るのが、東三河地方が発祥とされる手筒花火だ。家康公が、ここ駿府城二の丸で慶長18年(1613年)8月6日に日本で初めて「立花火」を観覧したと「駿府政治録」に記されており、その時の花火は、現在の手筒花火とほぼ同様のものであったようだ。静岡では平成10年(1998年)に浜松市にある「富幕開進社(とんまくかいしんしゃ)」より教えを受け、津島神社奉納 郷島煙火大会で初めて手筒花火を披露したのが、静岡での手筒花火の始まりだった。この郷島煙火大会で花火を揚げたのが、静岡でも200年もの歴史ある無形文化財の花火「龍勢」を上げていた郷島煙火保存会だ。その翌年の平成11年(1999年)に静岡まつりで手筒花火を揚げたのが最初で、以来手筒花火煙火保存会の方々により続けられている。
静岡市近郊には、手筒花火を自ら製作している煙火保存会が6団体あり、静岡まつりの「5つの物語」の中核を、この煙火保存会が担っている。
一般的な花火は火薬類保安責任者の花火師さん達が上げるが、手筒花火は神事のため神社の氏子や町民、有志達が、自分たちの手で火薬を詰めて手筒花火を製作する。放揚者(打ち上げる人)は、自ら竹の切り出しから竹の油ぬきや節を抜いて荒縄を巻き締め強度を高め、さらに調合した火薬を竹に詰めていく工程と放揚を、人任せにせず1人で行っている。それは火薬を扱っているので、一歩間違えると大事故に繋がるからだ。
それらが調和した時に繰り出される巨大な火柱からでる火の粉を浴びながらも、最後の見せ場となる「ハネ」の瞬間が観客を魅了させるのだ。この手筒花火に命をかける勇猛果敢な手筒の漢(おとこ)と女たちが、自分の思いを込めて打ち揚げる様は魂を揺さぶるほど見応えがある。
4月1日、静岡まつりの1日目。この日の手筒の演出は2部構成で行われた。その1部では、放揚する花火保存会の子どもさんが和太鼓を叩いており、その和太鼓との共演から始まった。響き渡る和太鼓のリズムに乗って手筒に火を灯した放揚者が代わる代わる登場。数名の放揚者が放つ火柱と和太鼓の音が一体となり、見ている観客の多くを釘付けにした。
さらに、息継ぎする間もなく次々と繰り出される、天を焦がすような火柱と大地を揺るがす轟音による手筒花火ショーの2部が開演した。通常1番太くて大きい手筒では、5斤(4000g)の火薬を筒に詰め、火柱は10m以上も上がると言われている。揚げ手はこの火柱の太さや高さ、色などをイメージしながら火薬を詰め自作しているのだ。
2日目は、会場に集まった観客に花火を配り花火衆と共に悪疫退散の祈りを込めて「希望の光」で世界の平和を祈った。さあ2日目の始まりだ。手筒に火を点火し、確実に点火したのを見届けてから所定の位置につき放揚が始まった。漢たちも女たちも、人にもよるが法被(はっぴ)を脱いだり着たままで放揚を行う。火の粉が降って来ても微動だにせず、ハネの瞬間まで同じ姿勢を保ったままだ。
手筒を持った揚げ手が目まぐるしく、入れ替わり立ち替わり次々と手筒を揚げていく。見ている観客が威勢の良い「ワッション・ワッショイ」という大きなかけ声をかけると、夜空に火柱が吹き上がった。
郷島煙火保存会「菊池 重仁(きくち しげひと)」会長が手筒花火の魅力を語ってくれた。
手筒花火の魅力は、なんと言っても高く舞い上がる火柱と最後の爆発する瞬間が魅力でしょう。揚げ手が手筒を制作する時に毎回、同じように火薬を詰めたつもりでも毎回出る花火が違うのです。みんなが目指している花火は同じでも、それぞれが少しずつ違う思いを持っています。
ある人は火柱が太く高く上がるのを目指している人もいれば、細い火柱を目指している人もいます。みんなが思い思い手筒の理想を持ちつつ、自分の理想に近づけるように各自が工夫しています。
観客の方も、そんな気持ちを理解して手筒の放揚を見てもらえれば、より一層「手筒花火」の魅力が増すのではないでしょうか?
静岡市近郊には現在、火薬を作る静玉屋を中心に郷島煙火保存会、奥大井煙火保存会、一色煙火保存会、柿田川煙火保存会、長尾川手筒煙火保存会、 巴川手筒花火の会の6団体があり、各団体とも手筒花火に命をかける花火衆が、自作した最高の手筒花火を揚げられるように努力しているのです。
静岡まつりの「大御所観覧 手筒花火」では、自作花火に命をかける熱い漢たちと、ひときわ輝く女たちが、夜桜と共に祭りを盛り上げている。
火の粉を浴び火傷も恐れない男衆・女衆達の花火衆が纏っている法被姿の粋な姿にも注目して欲しい。
満員となっていた会場の人たちに「手筒花火」の魅力を聞いてみた。手筒花火を目の前にしてカメラ持った焼津市から来た男性愛好家は、「静岡で行われている手筒花火には、ほとんど、何処へでも出かけています。手筒花火の会場に来ると、年甲斐も無く興奮して血圧が上がってしまいますよ。それほど、手筒花火は素晴らしい魅力を持っていると思います」
東京から手筒花火を撮影に来ていた女性二人組の写真愛好家が興奮気味に語ってくれた。「静岡まつりの手筒会場は、観客席との距離が近く凄い迫力がありました。そして、手筒花火の放揚時には、観客席からワッショイ-ワッショイのかけ声が合唱され、会場全体が大いに盛り上がっていました。
そして放揚を行う揚げ手と観客との緊張感が最高に達した時、凄まじい轟音で爆発する「ハネ」の瞬間を目前で見ると、迫力ある手筒花火に魅了されてしまいます。この静岡まつりに来てホントに良かったと思っていて、来年も必ず来たいです。」
「私はテレビではなく、生の手筒花火の放揚を見ることが出来て感激しました。男衆、女衆達がヨーカンと呼ばれる小さな手筒を持ち、高く揚がる火の粉を浴びながら歩く姿は火柱の後ろに映る春の桜と共に、その美しさに見とれてしまいました。桜をバックに手筒花火を見る事ができるのは、ここだけだと聞いて、さらに嬉しくなりました。また揚げ手が花火の筒をしっかりとかかえるようにして持つ大きな手筒では、火柱と共に最後に「ハネ」の爆発が轟音とともに筒から噴き出すのを見たときは驚愕するほど興奮しました。
その揚げ手の方達が手筒花火保存会に所属する20代~70代までの老若男女だと言うのにも驚きです。揚げ手の皆さんが手筒花火の魅力を伝えていて、それが私に伝わり胸がドキドキしました。もう完全に手筒花火にハマッテしまいました。」
手筒花火は、天を焦がすような火柱と迫力満点の爆発するハネだけではなく、手筒の揚げ手と観客との気持ちが一体化した高揚感を共有することにあるだろう。日本中が湧いたWBCで日本が優勝した時の高揚した気持ちとは違ったエキサイティングな高揚感を得ることができる。
手筒花火は、愛知や静岡地方だけでなく、関東でも揚げてられているので、一部だが下記に記述しているHPをチェックして、手筒花火を是非とも見てもらいたい。その魅力の虜になってしまうこと、間違いないだろう。
PHOTO&REPORT @JTPA TAKASHI OHTSUKA
第67回静岡まつり 大御所観覧 手筒花火
◆期間:2023年3月31日(金)~4月2日(日)
◆会場:駿府城会場(駿府城公園)
◆主催:静岡まつり実行委員会
◆問い合わせ:054-221-0182(静岡まつり実行委員会事務局)
◆公式WEBサイト:https://shizuokamatsuri.com/
◆大御所観覧手筒花火 https://shizuokamatsuri.com/event/fireworks/
※この情報は2023年「第67回静岡まつり」のもので次回のものは2024年にチェックをすること。
【手筒花火情報】
◆静玉屋 https://www.hanabi-shizutamaya.com/
◆郷島手筒花火Instagram https://www.picuki.com/tag/%E9%83%B7%E5%B3%B6%E6%89%8B%E7%AD%92%E8%8A%B1%E7%81%AB
◆奥大井煙火保存会Instagram https://www.picuki.com/tag/%E5%A5%A5%E5%A4%A7%E4%BA%95%E7%85%99%E7%81%AB%E4%BF%9D%E5%AD%98%E4%BC%9A
◆一色煙火保存会Instagram https://www.instagram.com/issikienkahozonkai/
◆柿田川煙火保存会Facebook https://www.facebook.com/kenkahozonkai/
◆長尾川手筒煙火保存会Instagram https://www.picuki.com/tag/%E9%95%B7%E5%B0%BE%E5%B7%9D%E6%89%8B%E7%AD%92%E7%85%99%E7%81%AB%E4%BF%9D%E5%AD%98%E4%BC%9A
◆巴川手筒花火の会 千秋のblog https://www.tumblr.com/chiaki-tkg
※ 巴川手筒花火の会のSNSが見当たらなく「千秋のblog」を掲載させていただいた。
◆群馬県 館林手筒花火大会(関東一と言われている)
花火大会情報 Jorudan https://sp.jorudan.co.jp/hanabi/spot_94870.html
◆茨城県 古河桃まつり(手筒花火も行われている)
https://www.kogakanko.jp/momo
https://www.kogakanko.jp/wp-ontent/uploads/2023/02/fc5a7f11a4e027d396c1a0c7057c28b6.pdf
その他、千葉県佐倉市、栃木県益子町などで開催されているので検索してみよう。
◆豊橋市観光コンベンション協会
https://www.honokuni.or.jp/toyohashi/tezutsuhanabi/
※お出かけの際には、HPを確認して最新情報を入手してから出かけよう。