新進気鋭の注目インダストリアルデザイナー ブリキの未来をプロデュースする米田充彦氏に今後の活動を聞いた。

「INTO THE EMOTIONS-感動の入り口-」をコンセプトに2017年よりスタートしたデザイン&アートフェスティバルの「DESINEGART TOKYO2023」に、昨年初めて日本製鉄が「ブリキのリデザイン展」を出展。東京地区のイベントとして兜町Keshiki内ギャラリー”AA”にて「ブリキのリデザイン展」を実施し好評のうちに幕を閉じた。

『ブリキのリデザイン展』

昨年に続き今年も、「DESINEGART TOKYO2024」に出展。ブリキ素材の新たな可能性を探るため、ブリキ素材を用いたインスタレーション(展示空間そのものを作品とするアート)や製品のモックアップ(試作品)、鉄素材の環境優位性に関する情報を展示した「ブリキのリデザイン展」がKeshiki内ギャラリー”AA”において開催された。

この展覧会は、日本製鉄とインダストリアルデザイナーの米田充彦(よねだ あつひこ)氏(ATSUHIKO YONEDA DESIGN 代表)の相互協力により実現したもので、そのデザインを手掛けている米田充彦氏に「ブリキの未来」について聞いてみた。

『ブリキは厚さ0.15mmという薄さの素材を缶や缶詰などに加工して製品を製作しています。缶詰はもともと、19世紀初頭にフランスのナポレオンが戦いに遠征するときに食糧を運搬するために使用したのが始まりで、それをイギリスのピーター・デュランドという人物がブリキを用いて「缶詰」の特許を得たのが起源と言われています。

その後、時代を経てクオリティの進化はあるものの、新しい使い方やマーケットの拡大などは昔からほとんど変わっていません。

まして、これからの地球環境を考えると、鉄は錆(さ)びて自然に戻り環境にやさしいため、もっと鉄の有効利用を考える必要があると思い日本製鉄さんと様々な試みを行う事になりました。

新しいブリキのプロトタイプ

今まで、「ブリキ✖️デザイン」という革新的価値創造の為の発想が業界的に乏しく、製缶業界のサプライチェーンは、目の前の仕事をこなしているのがこれまでの常識でした。特に、ブリキ加工をしている会社は中小の会社さんが多いので、その様な問題意識を持っている方が少なく、またイノベーションの為のリソースも社内に有していない為、そこまでの活動がされてこなかったのが実情でした。

私たちは、そこに着目して新しいブリキの未来を、様々なアイデアを出して実用化を目指して行うと考えました。デザインで能動的に新しいイノベーションを起こそうと試行錯誤を繰り返し、新たなマーケットの可能性を描くことができないだろうか?と日本製鉄の若い方々や全国の製缶会社さん達と月に1~2回程、勉強会を開き鉄の利用方法やデザインの力で新しい未来を開くことができないか?などを考えています。

ブリキのシューズボックス

鉄というのはクローズドループリサイクル(リサイクルされた素材が同じ製品として再利用される)率が96%以上と高く、錆びて地球に戻りますが、プラスチックなどの樹脂は永久に戻りません。一見、鉄は錆びても無くならないと思うかもしれませんが、数年で錆びて土に戻ります。極端に言うと地球自体が鉄鉱石の塊のようなものですから、それを考えると鉄は、自然環境に優しい物資とも言えるでしょう。

これら地球環境を考え、またSDG’sを意識しながら前回の展示では、ブリキ素材の新たな可能性を皆さんに知ってもらうために、鉄の環境優位性とともに新しいライフスタイルの在り方のプロトタイプを作成し提案しました。

例えば、災害などでの被災地で食べる缶詰にしても単なる缶詰でなく、デザインを施した

缶詰(器型)や酒器やブリキカップなど、被災地でも心をなごませてくれるブリキ製品など。』

今回の出展では、ブリキ素材を建材としての活用ができないか?という考えを基にディスカッションを進め、海洋資源を取り戻す為に鉄鋼スラグ(高炉での粗鋼時産出される副産物)を海に沈めて昆布の生育環境に寄与し海水を浄化して、魚介類が住みやすい新たな環境を創出している。

海洋資源の再生を促すための鉄鋼スラグ

米田充彦氏は、インダストリアルデザイナーとして、多くのメーカーの製品のデザインコンサルティングや革新的価値創を伴うデザイン開発を手がけており、2020年には日本製鉄電気亜鉛ニッケル合金めっき鋼板「FeL luce(フェルーチェ)」で鋼板として史上初のグッドデザイン賞を受賞、また2022年にはアクア株式会社の業務用ランドリー『Superior series』(業務用ランドリーとして史上初)でグッドデザイン賞を受賞、さらに2024年には川崎重工業の医療用自動運転搬送ロボット『FORRO』でもグッドデザイン賞を受賞するなど、 インダストリアルデザインの分野で期待されている人物だ。

Report @JTPA Takashi Ohtsuka

インダストリアルデザイナー 米田 充彦氏

つくる、使う,考える人のデザイン情報サイトJDN注目のデザイナー

https://www.japandesign.ne.jp/kiriyama/275_yoneda_atsuhiko/ayd-ci/

日本製鉄

https://www.nipponsteel.com/index.html

ブリキのデザイン展2024

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